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 発達検査の結果から

CIMG0121 のコピー

「もし抹茶がLDだというなら、自分もそうかもしれない」。

残暑の厳しい昼下がり、素麺を箸ですくいながら、ふと主人は言いました。

「ディスレクシア(読み書き障害)があったわけではないでしょう?」
「特別読み書きに苦労はしなかったけれど、抹茶と同じ傾向はあると思うよ。」
「同じ傾向って、どんな?」
「例えば『お城って、なあに?』と問われて、すぐに答えられないようなところ。
頭の中で映像は次々に溢れてくるけれど、言葉で説明するのが苦手なんだ。
抹茶もそうだろう?お城は知っていてイメージはできる。積み木でも作るけれど、
『お城って、なあに?』に答えられない。そういう傾向だよ。」

その言葉を、私は意外な心持ちで聞いていました。
主人は私よりもよほど論理的に会話を進めますし、言葉で説明することが苦手だとは
到底思えなかったのです。
「私は今まで主人のことを誤解していたかもしれない」。
そう感じた私は、まじまじと目の前にいる人を見つめました。
けれども、そんな私の視線を一向に介さず、主人は器の下に残った素麺をすくいあげ、
ははっ、と笑いながら言ったのです。

「自分の思考に言語はないんだ」

そして「ごちそうさま」という普段通りの言葉を口にし、普段通りに箸を奇麗に置きました。
その一連の日常的な動作と「自分の思考に言語はないんだ」という言葉には妙な剥離があり、
私の好奇心が疼いた事を覚えています。

「『自分の思考に言語はない』って、どういうこと?今こうして、会話をしているじゃない?」
「ああ、正確に言うと、『会話をする時だけは、言語で考えている』かな。逆に言えば、
会話…つまり人がいなければ、言語では考えられない。一人で考えている時は全て映像だから」
「映像は静止画?それとも動画?」
「動画だね。カメラをずっと回している感じだから、映画に近いかな」
「例えば、第一次世界大戦について考えるとき、頭の中はどんな感じになるの?」
「スケルトンの地球儀を衛星から眺めている感じかな。
クローズアップしてドイツ軍の鉄道輸送の様子を覗いたりするし、カメラを引けば
アメリカの動向やアフリカ戦線の様子も見える」

主人はさも意外だとばかり、こう聞いてきました。

「え、他の人は違うの?」
「他の人は知らないけれど、少なくとも私は違うよ。スケルトンの地球儀は思い浮かばない。
映像で記憶するといっても、私の場合、頭に浮かぶ映像は静止画で、なおかつ一場面。
つまり、重要なシーン、覚えにくいシーンを写真に撮る感じかな。言葉も入ってくるから、
漫画に近いかもしれない」
「ああ、漫画か。勉強に関して言えば、言語が入っている分、そっちの方が便利かもしれない。
自分の場合は、第一次大戦の世界状況やその原因を遡っていくような同時進行的思考は
好きだけれど、第一次大戦が何年からだったかということはなかなか覚えられないんだ。
ところで、第一次大戦て何年だっけ?」
「1914年。年号暗記は苦手?」
「年号は映像化しにくいから大の苦手だよ。記憶力もないからさ」
「記憶力といっても、フォトリシックに記憶するのは比較的得意でしょう?
少しだけカメラアイ的な部分を持っているじゃない?」
「意識さえすれば可能だけど、そもそも年号暗記に全く興味が湧かないから無理だなぁ。
しかも自分の場合、フォトリシックに記憶すると忘れやすいから、テスト対策には向かないと思う」




この言葉を聞いて、「遺伝」という言葉が浮かびました。
抹茶はまだ小さいので、彼女の思考パターンを詳しく伺い知る事はできませんが、
その傾向、気質は主人から受け継がれたものか…と、再びその思いを強くしたのです。

私は主人に尋ねました。

「抹茶の気質があなた似なら、あなたは誰に似たの?あなたのお父さんもお母さんも
言語能力の高い人でしょう?」
「それは多分…母方の亡くなった伯父さんだよ。ほら、物理学専攻のちょっと困った人がいたって、
話した事があったろう?あの人の血じゃないかな。自分は伯父さんほど能力はないと思うけれど」

そして最後に主人はぽそりと言いました。

「言葉はまだるっこしい」

私個人は言葉の力を信じているタイプですが、そうか、世の中こういう人もいるんだ…と、
結婚○年目にして、新たに知る事実でした。
いやはや…どれだけ近くにいても、人という生き物の多様さ、奥深さは一朝一夕ではいかない、
面白いものだと感じずにはいられませんね。

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14:39 | 発達検査
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