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 発達外来の受診***その3

お昼近かったせいか、ブラインドが半分ほど下りた窓からは幾筋もの光が伸び、
殺風景な事務机を明るく照らしていました。
先生は日を背にし、落ち着いた様子で、私に大まかな検査結果と対策を
教えてくださいました。

「図形の模写はとても良く出来ていました。処理スピードも早いですね。
絵を描くことが好きですか?」
「はい、大好きです。折り紙や工作も好きです」
「文字は書けますか?」
「名前は書けますが、文字の読み書きにはとんと興味がないようです」
「保育園では文字の読み書き練習などしますか?」
「ほんの少しだけしているようですが、していないに等しいと思います」
「目で見る力が強いので、就学前に家庭で文字を教えてしまっても良いかもしれません。
そうすることで、聴覚だけでなく視覚からも情報を入れられるようになり、
情報の取りこぼしが減りますから」
「就学してからでは遅いのでしょうか」
「今の子は就学前から読み書きできる子が多いので、入学後の負担を考えると、
少し前倒しで教えてあげた方が良いと思います。娘さんなら負担はないと思いますよ。
1年生の間は、新しい場に慣れることだけ考えても良いかもしれませんね」

A先生は「眼球運動トレーニングをすると良い」とも教えてくださいました。
日本ではまだ眼球運動と学習の関連性や有効性に関する研究は少ないのですが、
欧米では関心の高い研究分野なのだそうです。
抹茶の場合は元々この能力が高いので、更に伸ばす意味で有効とのことでした。

次に告げられたのは、私が以前から少し気になっていた「心の理論」の検査結果。
A先生は「まだ4歳なので、年齢相応ですよ」と前置きした上で、こうおっしゃいました。

「3~4歳向けの課題は通過できても、5~6歳向けの課題だと答えられたのは
3問中1問なので、まだ少し難しいようですね」
「同い年でも月齢の早い子や三人兄妹の末っ子の子とは話のテンポが違うと感じます。
それも心の理論の発達が問題なのでしょうか」
「そうですね。月齢の早い子や兄妹の多い子などは5~6歳向けの課題を突破している
と思うので、園でそうした子と接すると、若干すれ違いが出てくるかもしれませんね」

私は一瞬躊躇しつつも、「自閉的な傾向はありませんか」と聞きましたが、
「園の子ども達とコミュニケーションが上手くいかないのは、自閉的なものではなく、
上手く言葉にできないからでしょう」とのことでした。

次にA先生はIQの話に触れ、標準偏差といった少々専門的な話やベルカーブの図などを
提示しながらお話を進めていかれました。

「全体的なIQは問題無く、むしろ優秀なレベルと言えますが、2つのIQ差がとても大きい
のが気になりますね。正直に言ってしまうと、これだけの差というのは私も初めて見たと
言ってもいいくらいです」
「心理士の先生も遠巻きにそうおっしゃっていました」
「大事なことは動作性IQを活かして言語性IQを引き上げてあげることです。
療育センターの方では何か療育をされていますか?」
「いえ。でも、総合病院内のリハビリセンターで言葉の教室があるとお聞きし、
申し込んだところです」
「それで十分ですよ。療育的なことをあまり詰め込んでも疲れてしまいますから」

私がA先生の言葉に頷いた瞬間、待ちきれなくなったのか、「ママ、見てー」と
半開きにしてあったドアから、抹茶がおもちゃを手に持ち、ひょっこり顔を出しました。
先生は微笑みながら、優しく語りました。

「お母さんとのコミュニケーションや日常会話は問題ありませんね」
「えっと~、あのね、などの言葉を付けることが多く、言いたい言葉がすぐには出てきませんが、
家では良く話していると思います」
「言語訓練で語彙が増えればお友達との関係も変わってくると思いますよ」




言語訓練。
この時は、まだ言語訓練と言っても漠然としていて掴めなかったのですが、
言語聴覚士の先生のプロフェッショナル性を今後私はひしひしと感じることになります。


次回に続きます。

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07:28 | 発達外来
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